【設問設計のコツ】適切な回答を得られるアンケート質問の良い・悪い例を紹介
アンケートを実施したけど
「思っていた回答を得られなかった」
という事がありませんか?
正しいアンケート結果を出すためにも「設問の設計」が非常に重要です。
何を聞きたいのか? どういう風に回答して欲しいのか? を明確にしないと、回答者は作成者の意図を汲んでまで回答してくれないのです。
設問設計で失敗すると、折角得られたアンケート結果が正しいデータにならない可能性があります。
本記事では「失敗例」を元にどういう設問を作成すべきか? 注意するポイントなどを解説していますので、アンケート調査票の設問作成の参考にしてください。
アンケート調査票の失敗例(設問作成編)
設問の重複
設問を作るときには、似たような設問を複数作らないように注意する必要があります。似たような設問を複数作ると、回答者の混乱や疲労を招き、信頼性や有効性の低いデータを得る可能性が高くなります。
似たような設問を複数作ってしまう失敗談としては、以下のような例が挙げられます。
- あなたはこの商品に満足していますか?(はい/いいえ)
- この商品についてどのように感じていますか?(満足/普通/不満)
- この商品の品質についてどれくらい満足していますか?(非常に満足/やや満足/やや不満/非常に不満)
この場合、同じ商品に対する満足度を3つの異なる尺度で測っていますが、それぞれの尺度がどのように関連しているかは明確ではありません。
回答者は同じ商品に対して異なる回答をするかもしれませんし、同じ回答をするかもしれません。どちらにしても、データの解釈が難しくなり、データの有効性が低くなります。
3つの設問をほどよく結合して、
- この商品についてどれくらい満足していますか?(非常に満足/やや満足/どちらとも言えない/やや不満/非常に不満)
などの1問に統合するなどして、回答者の負担を減らしましょう。
設問の番号
アンケートの設問番号とは、設問につける番号のことで、回答者が設問の順番や関連性を把握しやすくするために重要な役割を果たします。
設問番号を付ける時に失敗してしまう例としては、以下のようなものがあります。
設問番号が連番でない(例:Q1、Q2、Q5、Q7 …)
設問番号は1から始まる連番でつけるのが基本です。途中で飛ばしたり、同じ番号を複数の設問につけたりすると、回答者が混乱してしまいます。
設問番号はQ1、Q2、Q3…のように連番で付けると、設問の順序や回答の進捗などが分かりやすくなります。
設問番号が重複している(例:Q1、Q2(カテゴリーが変わって)Q1、Q2、Q3 …)
設問番号は、カテゴリーごとにリセットしないことが望ましいです。カテゴリーごとにリセットすると、回答者が同じ設問番号を見て混乱したり、アンケートの分析時に不便になったりする可能性があります。
一つのアンケートではたとえカテゴリーが変わっても、設問番号は一続きの番号で付けるようにした方が間違いは少なくなります。
設問番号が階層的になっていない
例えば下記のような設問の場合、
Q1:商品Aを知っていますか?
Q2:(商品Aを知っている方に尋ねます)買ったことはありますか?
Q3:商品Bを知っていますか?
・・・
設問に階層構造(大項目・小項目など)がある場合は、それを設問番号で表現したほうが、回答者が答えやすくなり、集計や分析がしやすくなる場合があります。
この場合、Q2はQ1に対して下の階層のため、「Q2」→「Q1-SQ」にして、Q3を繰り上げてQ2にした方が分かりやすくなります。
設問番号が階層的になりすぎている(例:Q1-1-1、Q1-1-2、Q1-2-1、Q1-2-2 …)
階層構造にこだわりすぎると逆に分かりにくくなってしまい、回答者が読みにくかったり、誤解してしまう可能性があります。
設問番号を階層構造にする場合は、複雑にしすぎないように注意しましょう。
設問番号にローマ数字や漢数字を使用している(例:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ …)
設問番号は、回答者が一目で理解できるように、アラビア数字で表記することが望ましいです。文字や記号、小数点や分数、ローマ数字や漢数字などで表記すると、回答者が読みにくかったり、誤解したりする可能性が高くなります。
設問番号は最後に一括で見直しましょう。
設問の順序
アンケートの設問の順序は、回答者の負担や回答結果に影響する重要な要素です。設問の順序を決めるのに失敗した時の例としては、以下のようなものがあります。
ある商品の満足度を調べるアンケートで、
「商品について満足していますか?」⇒「商品を知っていますか?」
の順序で尋ねてしまうと、商品を知らない回答者にも満足度を尋ねることになり、回答者に余計な混乱と負担を生む可能性があります。
この場合、
「商品を知っていますか?」とまず尋ね、「知っている」と回答した方のみに「商品について満足していますか?」と尋ねれば、回答者に負担を掛けない設問ができます。
語句の統一
一つのアンケート上で使用する語句は統一しないと、分析時に比較しづらくなります。
例えば、
- あなたはこのサービスAに関心がありますか?(関心がある/やや関心がある/あまり関心はない/関心はない)
- あなたはこのサービスBに興味がありますか?(興味がある/やや興味がある/あまり興味が無い/興味が無い)
「関心」と「興味」はほぼ同じ意味ですが、どちらかに統一した方が回答者は分かりやすくなり、分析者は正確な比較ができます。
また、例えば、サービスの満足度の推移を調べる目的で、同じアンケートを複数回にわたって行う場合も、語句を途中で変えてしまうと質問の解釈が変わってしまうため、正確な比較になり得なくなってしまいます。
表現のブレを統一
同じ調査票で質問文の文言表現にブレがある場合、回答者に誤解を招くおそれがあります。
例えば、
例)「昨年」「去年」「前年」「前年度」「前期」など
「前年」と「前年度」などは意味が少し違いますが、同じ意味として記載してしまう場合があります。
作成最後に調査票を見直して、同じ意味の文言表現は調査票内で統一するように精査しましょう。
設問設定での失敗例
回答形式が合っていない
例えば、「商品を購入した理由は何ですか? 選択肢から一つお選びください」と尋ねている質問の場合、「興味があったから・安いから・CMを見たから」など理由が複数ある方は回答しづらくなります。
また、紙で行う調査票では「一つお選びください」と書いてあっても、〇を複数記入できてしまうため、回答者が不正な回答をしないように回答の形式を検討する必要があります。
例えば、「一つ」ではなく「当てはまるものを全て」に変更して複数回答形式にした方が回答者は全ての意見を回答できる為、回答しやすくなります。
ただし、最も強かった理由を知りたい場合は、質問文に「一番の」などの表現を付け加えて、「一番の理由は何ですか?」と単一回答形式にして尋ねるべきです。
「特になし」などの排他選択肢がない
排他選択肢とは、選択肢の中から選ぶ質問で他の選択肢と排他的な関係にあるものです。
例えば、「好きなフルーツを選んでください」という質問に対して、「りんご」「みかん」「バナナ」「スイカ」「その他」「特になし」という選択肢がある場合、「特になし」が排他選択肢にあたります。
選択肢に「特になし」が無いと、回答者が該当する選択肢がない場合に、回答できないか、無理やり回答してしまうことで、回答率や回答の精度が低下します。
また、選択肢に「特になし」が無く、「その他」の自由回答欄があれば、回答者はその回答欄に「なし」「ありません」「特にない」などと書いてしまうため、分析時に他の自由回答が見にくくなってしまいます。
質問を作成するときに、選択式の設問には「この中にはない」「利用していない」「知らない」などの排他選択肢が必要かどうかを確認するようにしましょう。
回答者に計算させる
例えば、
あなたが1ヶ月で購入するペットボトル飲料の種類の割合を、合計100%になるようにパーセントでそれぞれお答えください
という設問の場合、
お茶…20%、ジュース…50%、水…20%、その他…10%の様に合計100%になるように回答して欲しいところを、合計が100%以上や100%未満になってしまう場合があります。
この場合、そもそも回答者に計算させない様な質問形式に変更(「2:5:2:1」など比で回答させるなど)したり、WebアンケートやExcelシートで回答してもらって、計算は自動でさせるなど、より回答者が間違えずに回答しやすくなるように配慮しましょう。
数値回答形式の単位
数値回答形式の設問を作成する際は、「単位」の設定に気をつける必要があります。
単位が的外れだったり、間違っていたりすると、回答者に混乱を招き、正確な回答を得るのが難しくなります。
例えば、「1ヶ月の家賃はいくらですか?数値形式でお答えください」という質問で、回答欄の後に「千円」とあった場合、家賃が54,000円の回答者は「54」と回答すべきところを「54000」と書いてしまう回答者がいます。
この場合、例えば
「※千円単位でお答えください 例)家賃が54,000円の場合は『54』と回答」
の様に注釈や例文を入れたりするとやや分かりやすくなります。
失敗しない調査票作成のコツ
上記の失敗例から、なるべく失敗しない調査票作成のコツを箇条書きにすると、
調査票全体
- 意味が重複している設問はまとめる
- 設問番号は簡潔に分かりやすく、最後に見直す
- 設問の順序は矛盾が出ないようにする
- 同じ様な語句・表現は統一する
設問毎
- 回答形式は回答者がどう回答するかを考えて決める
- 選択肢に排他選択肢が必要かどうか意識しよう
- 回答者にはなるべく計算させない
- 数値回答形式の単位は分かりやすく、誤解させないように注釈などを入れよう
となります。
上記の失敗例が全てではないですが、調査票を作成する際に失敗例を意識すれば、より良い調査票を作成する一助になると思います。
まとめ
調査票の設問設計をする上で一番失敗しない方法は、単純なことですが、出来上がった後に自分で何回か回答してみることです。
回答者の視点に立つことによって、「質問文が理解しにくい」「選択肢が回答しにくい」など様々な問題点を洗い出す事ができるでしょう。
そして、自分で回答して確認した後は、周囲の方にも何回か回答してもらいましょう。自分は分かるけど、他人が見ると分からない、という調査票はやはり失敗作です。
調査票は、周りに調査の趣旨を適切に理解してもらい、それに対して率直な意見を得るためのものなので、独りよがりな調査票は作らず、回答者に優しく語り掛けるような調査票作成を心がけましょう。