アンケート「自由回答」の失敗例と作成ポイント|メリット・デメリット解説

ほとんどの方が何らかのアンケートに回答したことがあるかと思います。
質問の後にいくつかの選択肢があり、それを1つあるいは複数選択していくものです。

用意された選択肢をスイスイと選んで回答していくと、ふと手が止まる瞬間があります。

「ご意見・ご感想をご自由にお書きください」

今までは用意された選択肢を選んでテンポよく回答してきたのに、ここへ来て選択肢がない、自分で考えさせる質問の登場です。

このように選択肢が用意されていない質問が自由回答設問です。
フリーアンサー(FA)やオープンアンサー(OA)とも呼ばれます。

一番よくある自由回答設問は上記のような「ご自由にお書きください」といったものですが、他にも

  • 選択肢の最後に「その他(    )」といった選択肢にはない回答を求めてくる質問
  • 居住地、現在乗っている車、○○といえば何を思い浮かべますか? といった選択肢が膨大な数になるような質問

といったものも自由回答設問として設定される場合があります。

アンケートの「自由回答」でよくある失敗例

そんな自由回答設問ですが、上手に使えば選択式の設問からは得られない貴重なデータを入手できる可能性があります。

しかし、使い方や設定を誤ると、何の意味も成さないものとなってしまいます。

その例を以下に示していきます。
「自由回答」を上手に使う一助になれば幸いです。

1つの設問に複数の質問内容を入れてしまう

例えば ”ベッド” を試用してもらい、試用した感想をたずねるアンケートの最後に自由回答設問を1問設けるとします。

質問文はどのようにすればよいでしょうか?
アンケートの最後、しかも自由回答設問は1つだけということで、より多く、多様な回答を得るために

このベッドを使用してみて良かった点、良くなかった点
ご意見・ご要望、普段ベッドを購入する店舗等
ご自由にお書きください

としてみます。

すると、回答者は質問文に記載された通りに多種多様な回答を記入してしまいます。
そうなると、この自由回答設問で得られるものが焦点の定まらないぼやけたものとなってしまい、ほとんど役に立たなくなってしまいます。

自由回答設問1つに対して複数の質問内容を設けるのは極力避けましょう。

前問のどの設問を受けての自由回答設問か不明

水族館の満足度アンケートを作成するとしましょう。
顧客の満足度の種類を5つに分け、選択式の設問とします。

Q1:当館の展示施設・展示内容はいかがでしたか?
Q2:当館のトイレ等の施設はいかがでしたか?
Q3:当館の飲食施設はいかがでしたか?
Q4:当館のイベントはいかがでしたか?
Q5:当館のスタッフの対応はいかがでしたか?

選択肢はそれぞれ全て
「1.満足」 「2.普通」 「3.不満」
としてみます。

上記の質問で顧客が何に満足し、何に不満を抱いているかがわかりますが、なぜの理由が分かりません。
そこで、その理由を問う自由回答設問を設置してみます。

Q6:Q1~Q5の満足度の理由をお聞かせください。

一見何の問題もないように思える質問文ですが、例えば下記のような回答があった場合、その回答は役に立つでしょうか。

『施設がきれいで良かったが、少し親切さが足りないと感じた』

上記のような回答では、どの施設がきれいなのか親切さは施設の使い勝手か、スタッフの対応かが分かりません。
理由を問う自由回答設問は強力でよく使用されますが、どの設問に対する理由なのかを明確にすることが重要です。

回答を誘導してしまう

自由回答設問において意図せずやってしまいがちな失敗の代表に
無意識に回答を誘導してしまうというものがあります。

これは前問や回答例などに自由回答設問の回答になりうる選択肢や回答文を載せてしまい、回答者がそれに引っ張られて回答してしまうことです。

このような誘導を避けるためには、以下のような工夫が必要です。

  • 前問は自由回答設問と関係のないものにするか、なるべく少なくする
  • 回答例はできるだけ用いないか、複数の異なる内容や視点を示す
    または影響の出ない中立的な例文を用いる

無意識の誘導が起こってしまうと、回答者の本当の考えや感情が正確に反映されない可能性があります。
その結果、アンケートの信頼性や有効性が低下する恐れがあります。

無意識の誘導が起こらないよう注意しましょう。

回答欄の大きさが適切でない

細かいことですが、回答欄の大きさも質問の内容に合わせてしっかりと決めましょう。
質問の内容に対し回答欄が小さすぎると、回答者は回答を諦めたり、重要な部分を省いて回答してしまう可能性があります。
特に紙のアンケートの場合、自由回答欄は充分なスペースを確保しましょう。

「自由回答」のメリット・デメリット解説

自由回答設問は回答者の自由な発想のもと、様々な有益な情報を得ることができる一方、
活用するには手間と時間がかかり、正しく使用しないと成果を得られない、といった一長一短があります。

簡単に自由回答のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

自由回答のメリット

  • あらかじめ用意された選択肢にはない、自由な意見や感想を得ることができる
  • 選択肢では表現できない、微妙な思考・感情・ニュアンスを得ることができる
  • 住所や車の種類、第1印象等選択肢の数が多くなるような質問を設置できる
  • 回答者の満足や不満足だけでなく、その理由(ニーズや要望等含む)を得ることができる

自由回答のデメリット

  • 質問側・回答側ともに負担が大きい
  • 自由回答の集計方法はあるが、手間と時間がかかる
  • 設置数、設置の仕方、質問文の工夫等、正しく使用しないと期待通りの成果を得られない
  • 自由回答設問そのものだけでなく、前後の設問等アンケート全体に気を配る必要がある

「自由回答」は、アンケート調査での真の声を捉える大切な部分です。
そのメリットとして、回答者が自由に意見や感情を伝えることができ、時には予期せぬ貴重な情報を提供してくれます。
しかし、一方で、データの分析が難しくなるというデメリットもあります。

アンケート調査票を作成する際には、「自由回答」の部分をどのように配置し、どれだけの範囲で取り入れるかが重要となります。
アンケートの全体的な目的や後のデータ利用の方法に合わせて、「自由回答」の部分を適切に調整することが求められます。

アンケート調査票の「自由回答」を作成する際の注意点

ここまで<よくある失敗例>を見てきました。
ここからは、アンケート調査に自由回答設問を設置する際、気を付けたい注意点を記していきます。

欲張らない~1設問1質問1回答~

回答者に負担を強いる自由回答設問の設置数はなるべく少なくするのがベターですが、
上記【1つの設問に複数の質問内容】で述べた通り、設問数を少なくするために
無理に主旨の異なる多様な質問を一つにまとめるのは悪手です。

このような場合は

「良かった点」「良くなかった点」「ご意見・ご要望」「普段購入する店舗」

分けて設置した方が幾分か良いです。

もし設置数を減らしたいのであれば、自由回答設問はネガティブな質問の方が意外な意見、良質な回答を得られる可能性が高いので、
「良くなかった点」のみを聞いてみてもよいかもしれません。

自由回答は欲張らないことが大切です。

自由回答の目的を明確にする

自由回答設問を設置する際にはいわゆる<5W1H>を意識し、

いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように

がはっきりと分かるように質問の目的を明確に持ち、設問の必要性や質問文・質問の内容を熟考しましょう。

専門用語や略語などはなるべく使用せず、やむなく使用する場合は定義や説明をしっかり付けることが望ましいです。
また、回答者が回答しやすいように、設問の形式(文章、図表、音声、動画など)を工夫することが効果的です。

回答者の負担を抑え意味のある設問となるように意識しましょう。

回収した自由回答の扱い

自由回答設問の最大のデメリットは、質問者・回答者ともに負担が大きいということです。

ここで疑問を感じる方もいるでしょう。
回答者の負担が大きいのはわかるけど、なぜ質問者も負担が大きいの?
自由回答設問を設けるだけじゃないの? と。

アンケートを実施した場合、アンケート回収後に集計をしなければ、せっかく実施したアンケートが無駄になってしまいます。
選択肢のある設問であれば、比較的容易に集計作業を行うことができますが、自由回答設問はどうでしょうか。

貴重な意見を活かすためにも、1回答ずつ読み込む必要が出てきます。
回答者数が少ない、自由回答設問数が少ない等であればそれほど大きな負担にはなりませんが、
回答者数が多い、自由回答設問数が多い、書いてある文字数が多い等であれば、それだけ質問者の負担も大きくなるのです。

自由回答は、回収した後のことも考えて数・内容ともにバランスよく設置しましょう。

まとめ

ここまで見てきたように、自由回答設問は質問者・回答者ともに負担を強いられ、
上手に活用しないと何も意味をなさないどころか、無用な労力の元になってしまう場合があります。

一方で回答者の意見や感想を直接聞くことができ、ニュアンスや感情を含め選択肢にできない具体的な意見を得られる強力なツールでもあります。

アンケート調査に自由回答設問を設置する際は、正しく活用し、明確な目的意識を持ち、回収後の事も考えてバランスよく設置しましょう。